看護師が転職すると、前の職場で残っていた有給休暇は、原則として新しい職場へ引き継げません。有給休暇は勤務先の事業主との雇用関係に基づく権利だからです。
ただし、退職日まで在籍していれば、残った有給休暇を退職前に取得できる場合があります。また、同じ法人内の異動などで法律上の雇用主が変わらない場合は、転職ではなく継続勤務として扱われ、有給休暇が引き継がれることがあります。
転職すると有給休暇はどうなる?
別の病院や訪問看護ステーションなどへ転職し、雇用主も変わる場合、前の職場の有給休暇は新しい職場に持ち越せません。
| 状況 | 有給休暇の扱い |
|---|---|
| 別の医療法人や会社へ転職 | 原則として引き継げない |
| 同じ法人内で部署や病院だけが変わる | 雇用主が同じなら、引き継がれる可能性がある |
| 法人の変更を伴う事業譲渡など | 契約や承継の内容によって異なるため、個別確認が必要 |
有給休暇の根拠は、労働基準法第39条です。年次有給休暇は勤務先との雇用関係を前提とするため、退職して雇用関係が終了すると、未使用分を新しい勤務先で使うことはできません。労働基準法
退職前に残った有給休暇を使える?
退職日まで雇用関係が続いていれば、残った有給休暇を退職前に取得できます。有給休暇を取得した期間も在籍期間に含まれるため、退職日を変えずに、最終出勤日を早める形で消化することがあります。
たとえば、退職日が3月31日で、平日に取得できる有給休暇が10日残っている場合、勤務先との調整がつけば、3月中旬を最終出勤日として、残りの日を有給休暇にする方法があります。これは説明のための計算例であり、実際の取得日数は勤務日数や勤務先との調整によって変わります。
有給休暇を取るときの注意点
- 有給休暇を使い終わる日ではなく、雇用契約が終了する日が退職日になる
- 退職日を過ぎて有給休暇を取得することはできない
- 夜勤の勤務表や引き継ぎとの調整が必要になることがある
- 退職の申し出と有給休暇の申請は、できるだけ早めに行う
年次有給休暇は、原則として労働者が指定した時季に取得する制度です。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者が取得時季を変更できる「時季変更権」があります。もっとも、退職日を過ぎた日へ変更することはできないため、退職直前の取得では実際の調整が難しくなることがあります。
転職先ではいつから有給休暇が付く?
新しい勤務先では、前職の勤続期間がそのまま通算されるのではなく、原則として新たな雇用契約に基づいて有給休暇が付与されます。
通常は、採用日から6か月間継続して勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤すると、法律上の年次有給休暇が付与されます。フルタイム勤務などで所定労働日数が多い場合、最初の付与日数は10日です。パート勤務や短時間勤務では、所定労働日数に応じて日数が少なくなることがあります。
| 確認する項目 | 見る内容 |
|---|---|
| 入職日 | 有給休暇の最初の付与時期を計算する基準日 |
| 所定労働日数・時間 | 付与日数に影響する勤務条件 |
| 出勤率 | 最初の付与に必要な出勤状況 |
| 就業規則や雇用契約書 | 法律上の付与日より早い付与があるか |
勤務先によっては、入職直後や試用期間終了後に有給休暇を前倒しで付与する制度があります。ただし、前倒し付与の有無や日数は勤務先ごとに異なるため、求人票だけでなく、雇用契約書や就業規則で確認してください。
同じ法人内の転職なら有給休暇を引き継げる?
同じ法人内で勤務先や部署が変わるだけなら、有給休暇が継続する可能性があります。判断のポイントは、病院名が同じかどうかではなく、雇用主である法人や会社が同じかどうかです。
たとえば、同じ医療法人が運営する病院から、同法人の別の病院へ異動するケースでは、退職と再入職ではなく、法人内異動として処理されることがあります。この場合、勤続期間や残っている有給休暇を通算する扱いになることがあります。
一方、グループ法人や関連会社であっても、雇用契約を結ぶ法人が別なら、法律上は別の勤務先と扱われる可能性があります。次の点を人事担当者に確認すると判断しやすくなります。
- 現在の雇用主と転職後の雇用主の法人名が同じか
- 現在の職場をいったん退職する扱いになるか
- 勤続年数を通算するか
- 残っている有給休暇の日数を引き継ぐか
- 新しい雇用契約書に有給休暇の付与日がどう記載されているか
有給休暇を買い取ってもらえる?
未使用の有給休暇について、退職時に勤務先が買い取ることは法律上の原則的な処理ではありません。買い取りの有無や条件は勤務先の制度によって異なり、未使用分があるからといって、必ず金銭を受け取れるわけではありません。
退職前に取得したい場合は、退職日と最終出勤日を分けたうえで、残日数と勤務表を確認し、上司や人事担当者に申請します。買い取りを前提にせず、まずは在籍中に取得できる日数を確認することが大切です。
看護師が転職前に確認すること
転職を決めたら、次の順番で確認すると、有給休暇を使い残しにくくなります。
- 給与明細や勤怠システムで、残っている有給休暇の日数を確認する
- 就業規則や雇用契約書で、退職の申し出期限を確認する
- 希望する退職日と、最後に出勤する日を分けて考える
- 夜勤や引き継ぎを考慮して、有給休暇を取得したい日を勤務先へ申請する
- 転職先に、入職後の有給休暇の付与日と日数を確認する
- 同じ法人内の異動なら、勤続年数と有給休暇を引き継ぐ扱いか確認する
特に看護師は、夜勤の回数やシフトの確定時期によって、希望日に休みを取りにくいことがあります。退職日を先に決めてから申請するのではなく、残日数、夜勤表、引き継ぎ日程を照らし合わせて早めに相談してください。
看護師の転職では、前の職場の有給休暇は原則として新しい職場へ引き継げません。使い切りたい場合は、退職日までに取得できるよう、残日数とシフトを確認して申請します。同じ法人内の異動に見える場合は、雇用主が同じか、勤続期間と有給休暇を通算するかを人事担当者に確認しましょう。







