看護師の転職でも、退職日までに残っている有給休暇は、条件を満たせば消化できます。看護師だからという理由だけで、有給消化を一律に拒否されるわけではありません。ただし、取得できるのは退職日までの勤務予定日で、残日数すべてを使えるとは限りません。
看護師の転職で有給消化できるか
有給休暇は、在職中に取得する制度です。そのため、退職日より後に有給休暇を取ることはできませんが、退職日までの勤務日に有給を申請することはできます。
年次有給休暇の取得時期は、原則として労働者が指定します。会社には、事業の正常な運営を妨げる場合に取得日を変更できる「時季変更権」がありますが、退職日を過ぎた別の日へ変更することはできません。退職日が決まっている場合、会社が人手不足を理由に有給申請を一律に拒否できるとは限りません。
有給休暇の取得時期や時季変更権については、労働基準法第39条に定められています。
有給を何日消化できるかは「残日数」と「退職日までの勤務日数」で決まる
実際に消化できる日数は、次のうち少ない方です。
- 退職時点で残っている有給休暇の日数
- 退職日までにある本来の勤務日数
たとえば、残っている有給が10日でも、退職日までの勤務予定日が6日しかなければ、原則として消化できるのは6日分です。休日や公休に有給休暇を重ねて、取得日数を増やすことはできません。
反対に、退職日までに10日以上の勤務日が残っていて、残日数が10日ある場合は、引き継ぎなどの調整をしたうえで10日分を申請できます。
有給消化の日数を確認する計算例
仮に、退職日までの勤務予定日が8日、残っている有給休暇が12日ある場合は、次の計算になります。
消化できる日数の目安=8日と12日のうち少ない方=8日
残りの4日分を使いたい場合は、退職日を後ろに変更できるか会社と相談する必要があります。会社が退職日の変更に同意しない場合、退職日後に有給を取得することはできません。
看護師は人手不足を理由に有給を断られるのか
看護師が不足していることだけで、退職前の有給をすべて拒否できるとは限りません。病棟の勤務体制や夜勤の調整が必要でも、会社はまず代替要員の確保や勤務表の調整を検討する必要があります。
ただし、希望日が重なっている、急な申請で引き継ぎができないなど、具体的に事業への大きな支障がある場合は、取得日の変更を求められる可能性があります。その場合でも、退職日後へ変更できないため、退職日までの別の日に取得できるかを確認することが重要です。
「忙しいから無理」「看護師は有給を取れない」と口頭で言われた場合は、拒否の理由と代わりに取得できる日を確認しましょう。
有給消化を進める手順
- 有給の残日数を確認する
給与明細、勤怠システム、人事担当者への問い合わせなどで、退職予定日時点の残日数を確認します。 - 退職日までの勤務予定日を数える
公休や休日を除き、シフト上の勤務日が何日残っているかを確認します。 - 退職日と有給の取得希望日を整理する
引き継ぎに必要な勤務日を確保したうえで、最後の勤務日の翌日から退職日までを有給にする方法が一般的です。 - 書面や記録が残る方法で申請する
有給の取得日、退職日、最終出勤日を記載し、就業規則で定められた方法に従って申請します。 - 会社の回答を確認する
変更を求められた場合は、「どの日なら取得できるのか」「退職日までに何日取得できるのか」を具体的に確認します。
申請文には、たとえば次のように記載できます。
「残有給休暇について、○月○日から○月○日まで取得を申請します。最終出勤日は○月○日、退職日は○月○日を希望します。」
退職届を出した後でも有給申請できるか
退職届を提出した後でも、退職日まで在職していれば有給休暇を申請できます。退職届を出したことだけを理由に、有給の権利がなくなるわけではありません。
ただし、退職届に「○月○日付で退職する」と記載して提出し、会社が受理している場合は、その退職日を基準に有給を計算します。退職日を過ぎてから有給を追加することはできないため、申請は早めに行いましょう。
有給を使い切れない場合、会社に買い取ってもらえるか
未消化の有給休暇を会社が買い取ることは、法律上の一般的な義務ではありません。会社が退職時の未消化分について補償する制度を設けている場合はありますが、就業規則や会社との合意によって扱いが変わります。
そのため、退職前に「買い取ってもらえるはず」と判断せず、まずは取得できる日数を確認してください。退職日までの勤務日が不足している場合は、退職日の変更が可能か、未消化分の扱いを会社に確認します。
有給消化中に転職先で働けるか
有給消化中は、通常、前の職場との雇用契約が退職日まで続いています。その期間に転職先で勤務を始められるかは、就業規則、雇用契約、転職先の勤務条件などによって変わります。
二重就業の扱い、社会保険や雇用保険の手続き、守秘義務などが関係するため、転職先での勤務開始日を退職日前に設定する場合は、前職と転職先の双方に確認しましょう。特に、前職の就業規則で兼業や副業に関する定めがある場合は、先に内容を確認する必要があります。
有給消化を断られたときの確認ポイント
会社から断られた場合は、次の点を記録しておくと状況を整理しやすくなります。
- 有給の申請日と申請方法
- 申請した取得日
- 残っている有給の日数
- 会社が拒否した理由
- 代わりに取得できる日が示されたか
- 退職日と最終出勤日
人手不足を理由に取得日を変更されても、別の日を提示されない、申請そのものを受け付けない、退職日まで一日も取得させないといった対応の場合は、労働基準監督署や都道府県労働局の総合労働相談コーナーなど、公的な相談窓口に相談する方法があります。
相談する際は、雇用契約書、就業規則、給与明細、シフト表、有給申請の記録、会社とのメールやメッセージを用意すると、勤務条件を説明しやすくなります。
看護師の転職でも、退職日までに残っている有給は、勤務予定日を範囲として消化できます。まずは有給の残日数と退職日までの勤務日数を確認し、最終出勤日、有給取得期間、退職日を記録に残る形で勤務先へ申請しましょう。







