看護師の転職で退職を引き止められたときは、まず「退職する意思が変わらないか」を自分の中で決め、その結論に合わせて対応します。退職すると決めているなら、待遇改善の提案にその場で答えず、退職日と引き継ぎ内容を文書で整理して伝えることが大切です。
一方、給与や勤務条件の改善で残る可能性があるなら、条件を具体的に書き出して比較します。人手不足を理由に引き止められても、職場の事情だけで転職を取りやめる必要はありません。
最初に判断するのは「残る可能性があるか」
引き止めへの対処は、残る可能性があるかどうかで変わります。感情的に返事をせず、次の2つに分けて考えると判断しやすくなります。
| 自分の考え | 対応 |
|---|---|
| 転職すると決めている | 慰留の条件交渉を長引かせず、退職日と引き継ぎを確定する |
| 条件が変われば残る可能性がある | 改善してほしい条件を具体化し、書面で確認してから判断する |
| まだ迷っている | 転職理由、転職先の条件、現在の職場の改善可能性を比較する |
「人手が足りない」「今辞められると困る」と言われても、それは職場側の事情です。自分の健康、働き方、キャリアの希望を基準に判断しましょう。
退職すると決めている場合の対処法
退職の意思が固い場合は、理由を詳しく説明して説得の材料を増やすより、結論を繰り返して伝える方が有効です。
1. 退職理由ではなく結論を伝える
「もう少し考えます」「条件がよければ残るかもしれません」と伝えると、さらに交渉が続くことがあります。退職すると決めているなら、次のように伝えます。
- 「検討しましたが、退職の意思は変わりません」
- 「退職日まで責任を持って引き継ぎます」
- 「待遇の変更を理由に、退職の判断を変える予定はありません」
退職理由を聞かれた場合も、「今後の働き方を考えた結果」「一身上の都合」など、必要な範囲にとどめられます。現在の職場への不満をすべて説明する義務があるわけではありません。
2. 退職日と引き継ぎ内容を文書で残す
口頭で伝えた後は、退職届や退職に関する書面を提出し、提出日と内容が分かるように保管します。職場の就業規則に提出時期や様式が定められている場合は、内容を確認してください。
引き継ぎは、担当患者の情報、業務の進み具合、使用する書類や機器、申し送り事項などを一覧にします。ただし、患者情報を自宅の私物端末へ保存したり、転職先へ持ち出したりしてはいけません。
3. 返答期限を決めて、交渉を長引かせない
上司から「少し考えて」と言われた場合は、返答する日を決めましょう。退職の意思が変わらないなら、期限を過ぎても同じ結論を伝えます。
たとえば「○日までに引き継ぎ案を提出します。退職日は変更しません」と伝えると、待遇の話と退職手続きを分けて進めやすくなります。
条件次第で残る可能性がある場合の確認項目
残る可能性があるなら、口約束ではなく、変更内容と実施時期を確認してから判断します。「改善する」「希望を聞く」といった表現だけでは、実際の働き方が変わるか分かりません。
- 給与や手当はいくら変わるのか
- 夜勤回数や夜勤免除の条件はどうなるのか
- 勤務時間、休日、残業の扱いは変わるのか
- 配属先や業務内容は変わるのか
- いつから実施されるのか
- 誰が決定し、どの書面で確認できるのか
改善条件を確認できたら、転職先の給与だけでなく、夜勤回数、年間休日、通勤時間、教育体制、職場の人間関係なども同じ項目で比較します。条件が書面で示されない場合は、「改善されるはず」と考えて退職を撤回しない方が慎重です。
引き止めのよくある言葉への返し方
引き止めの言葉には、相手を責めずに退職の意思を繰り返して答えます。
| 引き止めの言葉 | 返答例 |
|---|---|
| 「今辞められると困る」 | 「ご迷惑をかけることは理解しています。可能な範囲で引き継ぎを行いますが、退職の意思は変わりません」 |
| 「勤務条件をよくする」 | 「変更内容、開始時期、書面での確認方法を教えてください。そのうえで判断します」 |
| 「次の職場に行っても続かない」 | 「自分の今後を考えて決めたことです。退職手続きを進めてください」 |
| 「後任が決まるまで残ってほしい」 | 「引き継ぎには協力しますが、後任が決まることを退職の条件にはできません」 |
| 「退職届は受け取らない」 | 「退職の意思と退職日を改めて書面で提出します。手続き方法を確認させてください」 |
退職を認めてもらえないときの考え方
期間の定めがない雇用契約で働く正職員などは、一般に、退職の申し入れから一定期間が経過すると雇用契約を終了させられるとされています。ただし、就業規則、雇用契約の内容、退職日、給与の締め日などによって確認が必要です。
有期雇用契約の場合は、契約期間の途中で退職できる条件が異なります。契約社員や期間限定の職員は、雇用契約書の契約期間と途中退職に関する記載を確認してください。
「退職届を受け取らない」と言われた場合でも、提出した事実と日付が残る方法を検討します。たとえば、上司や人事担当者への提出記録を残し、書面の写しを保管します。具体的な退職日や手続きに争いがある場合は、労働基準監督署、都道府県労働局の相談窓口、労働問題を扱う専門家などに相談してください。
なお、職場が人手不足であることだけを理由に、退職日を無期限に延ばす必要があるとは限りません。ただし、突然出勤しなくなるのではなく、契約と職場のルールを確認し、可能な範囲で引き継ぎを進めることが重要です。
強い圧力や嫌がらせがある場合
怒鳴る、退職届を破棄する、長時間にわたって帰らせない、転職先へ連絡すると脅すなどの行為がある場合は、1人で対応し続けないでください。
- 発言内容、日時、場所、同席者を記録する
- メールやメッセージなどのやり取りを保存する
- 直属の上司以外に、人事部や法人本部へ相談する
- 改善しない場合は、労働局などの公的な相談窓口や専門家へ相談する
録音や記録の扱いには状況に応じた注意が必要ですが、少なくとも「いつ、誰から、何を言われたか」を自分用に整理しておくと、相談時に事実を説明しやすくなります。
転職先が決まっている看護師が注意したいこと
転職先の入職日が決まっている場合は、現在の職場との交渉だけでなく、転職先にも入職予定日への影響がないかを早めに確認します。退職日が確定しないまま転職先へ連絡を遅らせると、双方の調整が難しくなることがあります。
ただし、現在の職場に転職先の病院名や施設名まで伝える必要があるとは限りません。不要な引き止めや直接連絡を避けるため、転職先の情報は必要な範囲だけにとどめます。
引き止められたときに避けたい対応
- その場の雰囲気で退職を撤回する
- 実施時期や内容が不明な約束だけで判断する
- 同僚への罪悪感だけで退職日を何度も延ばす
- 転職先の情報を詳しく話す
- 記録を残さず、口頭のやり取りだけで進める
- 感情的に相手を責め、引き継ぎまで拒否する
特に、退職理由が人間関係、過重労働、夜勤の負担、心身の不調などの場合は、改善の約束だけで解決するかを冷静に見極めます。同じ問題が繰り返される可能性が高いなら、引き止めに応じる前に転職する目的を振り返りましょう。
看護師の退職引き止めへの対処で最初にすること
まず、退職する意思が変わらないのか、条件次第で残るのかを決めてください。退職すると決めた場合は、「意思は変わらない」と伝え、退職日、退職届、引き継ぎ内容を文書で整理します。
条件次第で残る場合は、給与や夜勤回数などの変更内容と実施時期を書面で確認してから、転職先との条件を同じ項目で比較します。退職を受け付けない、脅す、嫌がらせをするなどの問題がある場合は、記録を残して人事や公的な相談窓口へ早めに相談しましょう。







